もくじ
小さな巨人 第1話のあらすじと内容分解
ネタバレ注意!↓↓
第1話あらすじ
捜査一課係長であった香坂真一郎(長谷川博己)は、事件を解決へ導く凄腕の捜査官であり、夢である捜査一課長にむかって出世まっしぐらであった。
しかしある日、すでに解決済みだが疑問が残る事件に手をつけようとしたことにより発生したスキャンダルが元で、所轄刑事の課長代理として左遷されてしまう。
そこで誘拐事件が発生する。その事件は、自分の降格の原因となった事件と関わりがあるものだった。
真実を追求しようとする所轄刑事・渡部久志(安田顕)の影響も受けつつ、犯人が誰であるかを追求していく中、誘拐事件の真実にたどり着こうとする香坂。
しかし、前の直属上司であった捜査一課長・小野田義信(香川照之)から、真実の隠蔽と現職への復帰が示唆される。
現場への復帰=出世コースへの復帰を持ちかけられ気持ちが揺れる香坂は、所轄の捜査をやめさせ渡部の反感を買う
。
しかし、現場復帰というのは小野田のウソであると見抜き、さらに、真実を追求するという警察官としての自分を殺したくないと思い直し
組織の命令に背き、再び事件の真実を追求すべく奮闘する。
しかし、その健闘も甲斐なく、事件は真実から遠ざかる方向へ解決されようとしてしまう。
香坂は、何か隠されている今回の事件の真実を追求すべく、所轄刑事として、それを隠蔽しようとする第一課長の小野田に宣戦布告をする。
第1話 内容分解
プロローグ
警察官は警察官職務執行法第一条第一項をもとに国民の安全を守るが
その警察官を守る法律は存在しない
3週間前 小野田の元に香坂と山田
第74代 警視庁刑事部 捜査一課長の小野田義信(香川照之)の前で、捜査の所見を述べる香坂真一郎(長谷川博己)[この時の役職は警視庁刑事部捜査第一課殺人犯捜査第1係係長]。
香坂は、犯人になった心境で犯人の殺人の動機を語る。
“敵は味方のフリをする”
“上司に裏切られた”
“その上司は父親も騙していたことがわかった”
“許すことなど絶対にできない”
“私が犯人ならどう思いどう殺すかを想像して証拠をつかむ。私の捜査の基本です”
隣には山田春彦(岡田将生)[捜査一課長付運転担当]がおり、同じく小野田に意見を述べる。
あとひとつ確証がないという香坂。
目星の男は絶対に黒だという山田。
“検察は私が説得する。証拠はある”“私の勘だ”という小野田。
部屋を出る3人。
小野田は、大勢の刑事たちの前で“これから被疑者の確保にあたる。必ず逮捕しろ!”と宣言。
被疑者がいるホテル 香坂と所轄の渡部・中村
ホテル2階の吹き抜けから、1階のラウンジにいるとある男を見張っている刑事の渡部久志(安田顕)と中村俊哉(竜星涼)。
男の元へ向かおうとする二人。
そこに現れた香坂(長谷川博己)は、“これは我々の仕事だ。所轄は動かないで”と言い、二人の刑事を引き止める。
被疑者のもとへ向かう香坂。それに続く数人の刑事達。
(香坂達が向かっているのは、刑事の渡部と中村が追っている男とは違う)
被疑者に声をかける香坂。逃げようとする被疑者だが、ラウンジにいた人間ほとんどが、捜査員だった。
逮捕状を出し、被疑者を取り押さえる香坂達。
渡部たちが目をつけていた男はホテルを出てタクシーに乗る。
追おうとする中村を止める渡部。“今日はよそう”
香坂は渡部に対して“勝手に捜査をしていたということか”と詰問。
対して渡部は“におったんだ。せっかく尻尾をつかみかけたのにあんたのせいで逃した”と文句を言う。
“におうとか感覚的なことを捜査に持ち込むな。捜査は理論だ”と言い切り、
さらに、ズボラな服装をしていた渡部に対して“張り込みするなら現場にあった格好をするといい”といい、
極めつけは、渡部の服を掴んだことにより靴に落ちたと思われる汚れをハンカチで拭き去っていく香坂。
さっていく香坂の後ろ姿を、憎々しげに睨んで、小声で文句をいっているのか口をもぐもぐさせる渡部。
警視庁17階の剣道場 香坂と同僚の藤倉
警視総監賞を申請したらどうかと、同期で警視庁刑事部捜査第一課殺人犯捜査第2係係長の藤倉良一(駿河太郎)に言われる香坂(長谷川博己)。
“自分だけの手柄ではなく、お前たち2係の協力のおかげだ”と謙遜する香坂。
さらに捜査の合間にも管理職昇任試験の勉強をしている香坂を“大したやつだ”とほめる藤倉。
香坂はゆくゆくは捜査一課長を目指しているという。
その話を近くで怪訝な顔で聞いている山田(岡田将生)
料亭 香坂と三笠の会話
前捜査一課長で現在は芝警察署署長の三笠洋平(春風亭昇太)にお酌をしてご機嫌をとっている香坂(長谷川博己)
(三笠は、香坂を捜査一課に引き上げてくれた香坂にとっての恩人)
先のホテルにて、勝手に動いていた所轄の刑事(渡部)の話題をふる香坂。
それに対して、“若い女性が飛び降り自殺して亡くなったという事件があり、その恋人に話を聞こうとしたらしいが、自殺ということで処理していたのに上の指示を無視して動いていた”と説明した上で、
所轄の連中は捜査一つまともにできないとバカにする三笠。
芝署刑事課
弁当を食べながら“におうなー”とホテルで取り逃がした男のことを考えている渡部(安田顕)
“におうでしょー”と渡部に同調しているかと思いきや、渡部の足が臭く臭っていることを指摘する若手刑事の中村(竜星涼)
服装もピカピカだったと本部の人たちへのあこがれを口にする中村だが、“おれたち現場畑がなれるわけない”とダメ出しする渡部
帰宅しようとする先輩刑事3人に対して、“もう帰るんすか。報告書は?”と聞く中村。
“明日やれることは明日やるのが公務員”とのんきに行って帰る刑事の一人・東山(加藤将樹)。
食事が終わり、もう一度捜査へ行こうとする渡部。躊躇する中村に対して“嫌なら帰っていいんだぞ“という渡部。
料亭 香坂と三笠の会話 小野田の乱入
三笠は香坂に語る。
“言われた仕事をこなし定時になったら帰る。所轄のやつらはそれでいい。その兵隊を動かす刑務畑の優秀な参謀がいればいい”
(捜査一課長になるのは、通常、刑務畑の人間なのだが、現場畑の小野田が捜査一課長になったのは異例中の異例だったとナレーションされる)
そして三笠は、“捜査一課長は警視庁の顔であり、本来、高卒の人間ごとき務まるものではない”と小野田を批判する。
そこに“連れの方が来ました”と料亭の中居から声掛け。
いぶかる三笠に“連れなどつれてきていません”という香坂。
そこに、捜査一課長の小野田(香川照之)が突然登場する。
香川は香坂に用事があったとわざとらしく話しかけ、さらに自分の前任の三笠に対して
“高卒上がりの叩き上げの自分にご意見を”とおべっかを言う。
三笠は。“刑事というのは現場での経験がものを言う”と及び腰になる。
すると小野田は“前捜査一課長がそこまで言うなら、自分は警視庁の現場の顔として自分の道を全うする覚悟です”と
先程の三笠が語っていた自分に対する侮辱を聞いており、それに対してやり返すような応対をする。
小野田は香坂に対して“これからも自分の右腕として存分に働いてくれ”と語り、日本酒を勧めてくる。
それに同調する三笠。
(前一課長と現一課長は水と油であり、自分は時に油、時に水となると心の中で独白する香坂)
料亭 外
店の外へ出る香坂
そこに車を止めて待っている一課長付きの運転手・山田(岡田将生)。
“やはりおまえの仕業か”という香坂。山田は“一課長に報告するのが自分の仕事”と飄々としている。
(捜査一課長の運転担当は、将来を有望視される物が抜擢されるとアナウンスされる)
三笠と小野田も店の外に出てくる。
車で立ち去る小野田と山田。
三笠は香坂に語る
“上司だったお前の父が小野田を引き上げ、次はお前が部下として小野田を支える、親子二代で奴にかかわるというのは皮肉なものだ”
そして“敵は味方のふりをするから気をつけろ”と忠告するも、
“まあ、やつの任期もいずれ終わり、次はお前がなるんだ。そうなれば親父さんも鼻が高いな”と励まし、車で立ち去る三笠。
帰る三笠を見送る香坂。その時幼き頃に聞いた父の言葉を思い出す。
“人のことをよく見ていると、においまで見えてくるようになる。勘というやつだ。だからお父さんは悪いやつをたくさん捕まえられる”
“お父さんの夢は、捜査一課長になることだ。
そこに、ホテルでの捜査の時、所轄の刑事・渡部が追っていた男が現れる。
ホテルにて渡部が“におったんだ”と言っていたことを思い出す。
男(加藤晴彦)は、すでに店に来ていたと思われる女性(佐々木希)と合流。
香坂は、父の言葉を今一度思い出す“人のことをよく見ていると、においまで見えてくる”
………
香坂の要請に応じて、調べたことを香坂に電話で伝える同期の藤倉。
死亡したのは風見という28歳の女性であり恋人に振られたことによりビルから飛び降り自殺したという
そしてその恋人というのが、ナカタエレクトロニクスという中小企業の社長の中田だという。
今日、風見の葬儀があったという。
……
自殺した恋人の葬儀に行った後、もう別の女性とあっている中田(加藤晴彦)に違和感を感じる香坂。
中田と女性が車に乗り店を出たところで、その行く手を遮る香坂。
飲酒運転を理由に中田を車から下ろす香坂。
酒など飲んでいないと、いらいらしている中田に対して、その確認のために警官を呼んだという香坂。
香坂は、さらに、そこにいる女性とはどういう関係かを中田に聞く。
この後仕事があって忙しいといい、車に乗ろうとする中田を止めようとする香坂。
”しつこいんだよ!”と切れて、手に持っているキーで自分の車の外装を傷つけながらも香坂を振り切って車にのる中田。
香坂の自宅 妻の美沙
帰宅する香坂。料理している妻の美沙。
1ヶ月泊まり込みで帰宅しないと聞いていた美沙は、夫に“なんでいるの”と聞く。
その場でスーツを脱ぎながら“俺が解決したからだ”と答えるのだが、
美沙は、“そこで服を脱がないで”とダメ出しする。
さらに美沙は、香坂のワイシャツの匂いを嗅ぎ“くさっ”と一言。
“毎日シャツは変えているよ”と弁解する香坂。
テーブルには2人分の食事が用意される。
“用意してくれていたんだ。食べてきたけどせっかくだから食べる”という香坂。
そこでドアホンがなり、香坂の実母である真由美(三田佳子)が現れる。
美沙も“今、ちょうどできたところです”と嬉しそう。
母が現れびっくりする香坂。
そこで初めて、“この夕食はおれのじゃないんだ”と気づく。
翌朝、
朝食時に藤倉からの電話に出て、ゴーンバンクについてのネットニュースを見ろと言われる香坂。
そこに書かれていたのは、宴会帰りの刑事が、行き過ぎた捜査で車を破損したという自分に関する記事だった。
警視庁 尋問される香坂
ネットニュースを元に、警務部監察官の柳沢(手塚とおる)に尋問させる香坂。
誤解だと弁明する香坂だが、問われているのは、その時、日本酒をのんだかどうかということだった。
黙り込む香坂。
柳沢は、お前に黙秘権はなくお前を守る法律もない。この記事が本当であれば、万死に値すると脅してくる。
そこに小野田が呼び出され登場。
昨夜、香坂と一緒に料亭にいた小野田に対して、香坂が昨夜、日本酒をのんだかどうかを尋ねる柳沢。
小野田は、しばらく考えたように沈黙した後“飲んだと記憶している”とあっさりいいのける。
確かに事実ではあったが、自分をおとしめるかのような小野田の発言に呆然と立ち尽くしてしまう香坂……
警視庁
香坂の新しい肩書(芝署の刑事課課長代理)への手続きを指示される人事課職員の三島祐里(芳根京子)。
(それまで香坂は異例のスピードで出世を重ね、ノンキャリアでは最年少で警部になり、5年前に捜査一課へ配属となってから、様々な事件を早期解決させてきたというアナウンス)
荷物を整理する香坂。
同期の藤倉は香坂を見るも、周りの目を気にしてか、あいさつもせず通り過ぎる。
警視庁を去り際、山田に声を掛けられる。
“誰もあなたをかばえない。わからないのは、どうしてあなたがあんなことで失敗したかということ”
その質問に、自分でも答えがわからず、無言でその場を立ち去る香坂。
車の中 小野里と山田の会話
小野田が優秀な右腕である香坂を守ると思ったと話しかける。山田。
それに対して小野田は答える。
“自分なら香坂を守ることも出来たが、同時に自分は警察組織の規律も守らなければいけない。
どちらを守るべきか、決めたのは「勘」だ”
芝警察署
(芝警察署は、職員数250名、その内刑事が30名。歴史ある分署であり、歴代の捜査一課長が退任後に所長のポストについていることがアナウンス)
芝警察署に入る香坂だが、誰一人姿を確認できない。
臭いに気づきよくみると、渡部刑事が一人、寝ていた。
渡部を起こす香坂は、部下の評価は一通り調べたといいつつ
渡部の遅刻早退が多いことに言及し、靴と靴下の臭さに言及ししつつ
刑事は外見を清潔に保つことも重要だと注意する。
“どうしてあんたがここに来ることになったのか。何かあったのか”と皮肉を言って言い返し、
出勤は明日からではないのかと問う渡部。
今日はその挨拶に来たという香坂は、ふと窓から外をながめると、一課長の車が止まっていることに気づく。
一課長が来ているのではと思い、確認するために部屋を出る。
上の階の、ある部屋に入ると、そこには一課長に礼をする大勢の警察官が集まっていた。
あっけにとられる香坂と、ついてきた渡部。
特殊班捜査担当管理官である片山(神尾佑)は、2人に“早く座れ”と怒鳴る。
そこにはすでに中村刑事もおり、渡部の携帯に何回も連絡したという。
捜査会議が始まる。
日本経済階のトップに立つ、大手企業のゴーンバンク社社長の中田が誘拐されたという。
中田はいつもより30分早く家を出て、歩いて出勤するが、定時になっても会社に現れなかったという。
その後、自宅の門に中田本人の携帯電話が、掛けられており
そこには、縛られた中田の写真と“身代金5億円用意しろ”との犯人のメッセージがあった。
現場補足班から50人の捜査員を用意するという中、
所轄からは何人だせるかと片山(神尾佑)から聞かれ、14人とおどろおどろ答える所轄の刑事・東山(加藤将樹)であるが、
誘拐訓練経験者が一人もいないことに“いままで何をしていたのだ”と怒られる始末。
所轄に配られた無線機が人数分ない中、無線機を所望し取ろうとする香坂だが、
“あなたの出勤は明日からのはず。そして所轄は後方支援にすぎず、現場は本部特殊班に任せればいい”と無線機を取り上げられる。
その話を聞き、“じゃあ、ここでゆっくり拝見しますか”と斜に構える渡部。
そこで犯人からの連絡が入る。
“身代金5億を4つのトランクに分け、1時間以内に東京駅に来い。運搬人は人質の息子である中田隆一。警察の動きが確認された場合、人質は殺害する”と。
今回の自分の降格の原因になった中田隆一が、今回の人質の息子であることを知り、神妙な思いになる香坂…
捜査本部と現場
捜査本部に映し出される監視カメラの映像。中田隆一が身代金を運んでいく。
香坂は渡部に語る。“犯人は捜査員を分散させる気かもしれない”
中田隆一は身代金を犯人の指示メール通りに一つずつ違う場所においていく。
(周りには一般人に扮した捜査員が見張っている)
そして、最後のトランクを持ったまま、犯人の指示により、地下鉄の列車に乗る。
トランクの一つを見張っていた所轄の刑事達。会議室からの指示により、無線をもたない中村一人を残して、地下鉄に乗り込む。
香坂は、監視カメラ映像を見ながら“中田隆一への見張りが多すぎる、捜査員はトランクというより隆一本人を追っているような…”と訝る
そこへ、香坂の同僚の藤倉が入ってきて、中田隆一についての調査結果を小野田に報告している。
香坂は悟る
“捜査一課は、この事件を中田隆一の自作自演と考えているんだ。その根拠となる証拠を何か掴んだのか”
それに対して。隣にいる渡部が語る
“隆一には父も知らない会社の借金がある。金がほしいのは確かだが、しかし、彼はこの誘拐事件には無関係だ”
それはどういうことかと問う香坂。
渡部は、この1ヶ月、隆一に張り込んでいたが、誘拐に関わることはまったくしていないと断言。
その話を聞いた香坂は、小野田の所へ駆けつけ“中田隆一は今回の事件とは無関係です”と言上する。
所轄は黙れという片山。
それを制止して話を聞く小野田。
香坂は、渡部からきいた話をして“ただちに捜査員の配置換え変更をするべきです”と言う。
その時、特命班からの、犯人は指示メールを使うのに、駅内のWIFIを使っているという報告が入る。
この報告で、ようやく中田隆一は犯人ではなかったと気づく捜査本部。
この時、トランクの一つを一人で見張っていた中村の周辺で煙があがってくる。
煙の元をたどるため、トランクから目を話してしまう中村。無線を所持していないため、その場から離れるなという本部からの指示が聞けない。
(煙はトイレにあった発煙筒だった)
中村がいない間、取り残されたトランクを監視カメラでみている捜査本部だったが、トランクは野次馬でカメラから隠れてしまっている隙に、消えてしまう。
戻った中村は、トランクを持って階段をあがる人物をみつけ追いかける。
その姿を監視カメラで見ていた渡部は、“まて、そいつは犯人ではない”と叫ぶも、本人には届かず。
トランクをもった男を階段の途中で捕まえる中村。
その時のはずみで、トランクは階段下に転げ落ち、階段下にいた子どもに直撃しようとする。
しかし、山田が駆けつけ、トランクから子どもをかばい、事なきを得る。
トランクを持っていた男は置き引きの常習犯ということだった。
中田隆一から連絡があり、“警察がいたから取引は中止だ”という犯人からのメールが届いたことが報告される。
失態を所轄のせいにする片山…
芝署 所長室 香坂と三笠の会話
香坂は、この失態を取り返すと言いうのだが、
三笠は“小野田を見返したい気持ちはわかるが、それはやめろ。ここには捜査一課の時のような使える部下はいないのだ”と諭す。
気持ちを押し殺して“はい”と答える香坂…
翌日の捜査会議
捜査会議の後方にで、渡部に話しかける香坂。
“自殺と断定されたのに、どうして中田隆一を調べるのか”と。
渡部は、“ただの勘”と答えるのだが、“勘で行動するな。捜査は理論にもとづき組織で行動するもの。今度なにかあったら、逐一自分に方向せよ”と返す香坂。
捜査会議では、中田社長の誘拐時の足取りについて論議されるが、まったく手がかりがないという。防犯カメラにも映っていないと。
目撃情報をみつけよという指示が出され、会議は一旦終わる。
小野田は山田に指示を出す。“香坂に張り付いてこい”
香坂は、渡部の姿を探すが、すでに勝手に動いているという。
香坂に接近する山田。部下に逃げられた香坂に、“さすが所轄は動物園だ”と皮肉をいいつつ、自分も回るから道案内をしてくれと頼む。
署内 廊下
廊下を歩く小野田に、人事課職員の三島祐里(芳根京子)が書類を渡す。
立ち去る小野田に、さらに訴える三島。
“自分は、香坂さんにお世話になったことがあり、彼は、警察犬のブリーダーになりたかったという自分の夢をバカにせず聞いてくれた。
香坂さんは、今度の管理職試験に受かり、捜査一課にもどりますよね。すべての警察官に平等に出世のチャンスがある昇任試験ですから”
それに対し、小野田は語る
“建前はそうだが、警察には出世できる人間と、できない人間がおり、一度出世の道からはずれれば元に戻ることは出来ない。
昇任試験も最後は面接になり、最終的には人が人を決める”
立ち去る小野田。
聞き込み調査
その後、中田会長の足取りの聞き込み調査をする所轄の刑事達だが、情報は得られず。
今日も渡部がいないという指摘をする山田。
中村に渡部の所在を聞く香坂…
風見京子の墓前
自殺して亡くなったといわれる中田隆一の恋人であった、風見京子の墓参りに来ていた渡部を見つける香坂と山田。
渡部は語る
“風見は、父親と二人で監視カメラの画像システムの開発をする会社を運営していた”
香坂は“自分はこの事件に関わったおかげで警察人生が狂った。この事件について納得出来ないと前に進めない”と前置きして
“あなたの勘というやつが聞きたくなった”と渡部に言う。
渡部
“風見京子がなくなった後、娘が自殺するはずないとその父親から相談を受けていたので、中田隆一本人も聞いたが、彼女とは分かれて一切関係ないとの一点張り。
自分たち所轄は足しか使えない。だったらその足を使ってとことん前に進むしかない。
しかし、中田隆一が臭うとおもったから張り付いたが、1ヶ月たってわかったことは、中田隆一が京子の死に関わっていないということだけだった。
勘で動いてすいませんでした。おかげですっきりしました”
所轄 刑事課
所轄に戻る、香坂、山田、渡部。
刑事たちが雑談している。
捜査会議はどうしたと聞く渡部。
所轄は会議に参加しなくていいというお触れが出で、指示があるまで待機せよということだった。
香坂は所轄の部下たちを叱る。
“指示を待てというのは、所轄に指示してもしょうがないと思われている証拠だ。情けないと思わないのか!
自分はあなた達と違う。できることは徹底してやるべきだと思っている”
それに対して、“これまで多くの人に聞き込みをした”と弁解する中村。
香坂はさらに言う。
“お寺のだけでなく檀家にも、また幼稚園の先生だけでなく園児にも話を聞いていくんだ”
“我々は足しか使えない。ならばその足をつかってとことん前に進むしかない”と、墓で渡部に言われた言葉をそのまま伝える。
“指示に従えと署長に強く言われていますし”と弁解する中村をよそに
再び調査へ出発する香坂。それについていく渡部。
幼稚園~公園
園児に中田社長の写真を見せながら話を聞く渡部。香坂。
それを傍目に、“捜査は本部にまかせればいい”と、香坂を監視する山田。
香坂は山田を問い詰める“
“そもそも本部が追っているのはなんだ?藤倉達2係も動いている。
犯人の要求は5億ではなく他にあるのではないか。連絡がこないのは、その要求が満たされるまで待っているのではないか。
捜査一課は何を隠している”
その質問には答えず“とにかく待機です。捜査一課の命令です”という山田。
その時、香坂に渡部からの電話が入る。
園児の一人に目撃者がおり、その日、公園でかくれんぼをしていたとき黒い帽子が見えたという園児の証言を電話ごしから聞く。
園児が証言した公園に行く香坂と山田。
山田は園児の証言に取り合わない。
しかし香坂は、それを重要な証言だといい、再現を試みる。
その結果、犯人の身長は190センチ以上だと推理する香坂。
渡部は、現場で落ちたネクタイピンを見つける。「K.NAKATA」と刻印されていた。中田社長のものと断定する香坂。
さらに香坂は、渡部に中田社長絡みで、身長190センチ以上ある人物の心当たりを聞く。
渡部は、自殺したとされる風見京子の父・風見康夫だという。
その話を聞き、その場から去る山田。
香坂は、所轄に風見康夫を当たるように渡部に指示を出す。
風見エレック社前
香坂・渡部が風見康夫に当たろうとするも、すでに捜査一課の手が入っていた。
“この会社は3日前に倒産していた。あなた達は何もするな”と言う山田。
所轄の中村から香坂に電話が入る。
風見康夫の自宅はすでに捜査一課が入っており、また所轄の風見京子自殺の資料まで持ち出しているという。
“捜査情報をもらしたのはお前なんだな。誘拐犯は風見康夫だと断定したんだな。答えろ”と山田に問い詰める香坂。
“あなたは所轄に説明したことがあるのか。あるのは命令だけだ”と冷たく答える山田。
山田の携帯電話が鳴る。香坂に代われという…。
捜査一課長室
小野田に呼び出された香坂。
小野田は香坂に“よくやった”と褒める。
捜査一課は何を追っていたのかを問う香坂。
それに答える小野田。
身代金5億とともに、犯人は、近日行われる新システムが発表されるゴーンバンク社のイベントを中止し、それをゴーンバンク社のサイトに公表せよということだったという。
その新システムと同じデータが風見エレック社にもあったことから、
風見京子の自殺は、自社データがゴーンバンク社に不正に盗まれたことが原因だったのではないか、
またそれを確認するため、風見康夫は中田社長を誘拐したのではないかということを“仮説”として語る。
そして小野田は“今回の犯人の動機は身代金5億円だけだったということだ。
それで事件は終わりであり、それ以上所轄が関わることを許さない”と言う。
それに対して香坂は問う。“それはゴーンバンク社の不正を隠蔽するということですか”
小野田はあくまで仮説だと言って話を変える。
“新しい職場はどうだ?やってられないだろう。捜査一課のありがたみがわかったか。
私も同じ。お前という優秀な部下がいれば、今回の事件はもっと早く解決出来ただろう。
明日の昇任試験、受けろ。名前さえかけば合格できる。私ならそれができる”
所轄 刑事課
刑事課室に戻った香坂に、話しかける渡部。
“風見康夫の自主を促す交渉役をやらせてくれないか。康夫が身代金目的で誘拐したとは思えない”
迷う香坂。
渡部はさらに問う。“私ならそれができる。一課長はなんと?”とさらに問う渡部。
香坂は答える。“ここまでにしましょう。あとは本部に任せましょう”。
訝る渡部。“どういうことだ。一課長になんて言われた”
香坂“所轄は指示があるまで待機です”。
渡部は“敵は味方のフリをする。あんたも結局向こうの人間だったってことか。だったら我々警察は何を守っているというのだ!”と怒る。
その後、捜査本部では風見康夫の所在を探るべく目まぐるしく動く。
香坂 管理職昇任試験日当日
翌朝の食事中、目をつぶっている香坂に、妻の美沙が声をかける。
テストに遅れるよ、大人になってもテストがあるなんて信じられないという。
香坂“俺が捜査一課長になったら嬉しいか”
美沙“そりゃね。一等地に家が立てられ車は運転手付きの高級車。定年後も天下り先がある。なんで聞くの?あなたがうれしければそれでいいの”
………
捜査本部では、風見康夫が所有する家に人影が発見されたという報告が入る。
………
昇任試験に向かう香坂に渡部から、本部の捜査員が一斉に出ていったから自分も向かうとの電話が入る。
それは認められないと言い、急ぐからと電話を切る香坂。
………
昇任試験会場ではすでに試験がはじまというとしているが、そこに香坂の姿はまだない。
………
道を歩く香坂。様々な人の声が頭をよぎる。
幼いころ聞いた、“捜査一課長になることが夢だ”という父の言葉。
“お前は出世ルートに戻れる”“捜査一課長がお前の未来だ”という小野田の言葉。
“我々警察官は何を守っているというのだ”という渡部の言葉。
“あなたがそれでうれしいならそれでいい”という妻・美沙の言葉。
走る香坂。
………
捜査本部では、突入班が現場に到着したという報告が入る。
………
試験会場にて管理職昇任試験が開始されたが、香坂は姿を現さなかった
………
香坂は、所轄の刑事課室へ姿を現す。
今更何をしに来たんだと部屋を出ていこうとする渡部。
それを止める香坂。
“待機しろとでも言うのか”と怒る渡部。
“今行ってもすでに突入班が行っており遅い、我々にできることをするんだ”と言う香坂。
香坂は皆に向かって、これから風見康夫に自主を促すという。
そして渡部に頭を下げながら “お願いします。捜査一課は私が説得します”という香坂。
………
犯人と人質がいる家の周りに、突入班の配置が間もなく完了するという。
家の中にいる、風間康夫と縛られている中田社長。
風間康夫が薬を取り出しながら、中田社長に対して、
“正直に言わないなら、これを飲んでもらうしかない”と言う。
そこに、風間のタブレットに、メッセージが入る。
………
所轄の刑事課で、風間にメッセージを送る渡部。
“あなたのやっていることは娘さんが望んでいることではない。それではゴーンバンクと同じだ”
………
捜査本部にて。
突入班の配置が完了したという報告が入る。
突入のゴーサインを出そうとする小野田。
そこに犯人がタブレットを見ており動きが止まったという報告が入る。
次の瞬間、捜査本部に香坂が入ってきて、突入命令は待ってくれと一課長に進言する。
今犯人を説得しているという香坂。捜査員たちは犯人へのメール接触をやめさせるため刑事課の部屋へ向かう。
犯人が逆上したらどうするのだという片山に対して、
“かならず説得できます。これがこの事件を解決するベストな方法だと思っています”と言う香坂。
………
所轄の刑事課
刑事課の部屋に押しかけてくる山田を筆頭にした捜査員たち。
中村は、入り口をふさいで、捜査員たちの入室をふせぐ。
………
香坂は、必死に小野田に頼み込む。
“説得に当たっているのは犯人の相談も受けた、現場の叩き上げの刑事です。あなたならわかってくれるはずです”
それに対して小野田は
“ああわかってる。そういう出来の悪い所轄刑事が一番信用できないということを!”
小野田の予想外の返事に驚く香坂。
なおも頼み込もうとするも、藤倉たちに止められてしまう。
………
所轄の刑事課
渡部が、犯人へ「必ず捜査を再会し真実を突き止めます、信じてください」という説得メールを送り終わる。
そこに犯人の風間から電話が渡部に入る。
………
次の瞬間、小野田の突入命令がくだされ、突入班は風間と中田社長がいる家に突入し始める。
犯人風間は確保され中田社長の無事も確認される。
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捜査本部にて、呆然とする香坂
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刑事課
入ってきた捜査員に取り押さえられる渡部。
犯人の風間から“わかった、自首する”という言葉をもらった直後のことだった。
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捜査本部
風間康夫は、毒物を飲んで、現在、意識不明状態だという。
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外にでる小野田と山田
その行く手に立つ香坂。
香坂を通り抜ける小野田と山田。
香坂は小野田に言う
“もし私が試験を受けていたとしても、合格などしない。違いますか”
小野田“もしそうだとしても、お前は試験にいくべきだった。疑問を抱かず上の指示にしたがう。それが組織に生きるということだ”
香坂“あなたに従うことで組織で生きることが出来たとしても、警察官としての自分は死ぬことになる。それは絶対にできません”
“そしてももう一つ、この事件には裏があるはずです”
小野田“その根拠は”
香坂“私の勘です”
小野田“お前がその言葉をいうとはな。その勘に覚悟はあるのか。その言葉を捜査一課長の私の目を見て言え。覚悟なき者に何も言う資格はない”
香坂は改めて小野田の前に出て、“覚悟ならあります。私は所轄刑事として捜査一課のあなたと戦ってみせる”と宣言。
そんな香坂を無言で見つめ、そして去っていく小野田。去っていく小野田に一礼する香坂。
第1話 終